一口に「肥満外来」と言われても、まったく予備知識のない人にとっては、一体どんな場所なのか見当もつきませんよね。
そこでこの記事では、肥満外来の初歩の初歩、「そもそも肥満外来って何?」という疑問にお答えします。
もくじ
肥満外来とは?
皆さんも知っての通り、ダイエットを成功させるのは簡単ではありません。
これまでの食事や生活習慣を改めるのは、どうしてもストレスになります。すると、
- 食事制限やダイエットの停滞期に耐えられず、挫折してしまう
- よしんば一時的に痩せられても、好きなものを我慢し続けたストレスで暴飲暴食。リバウンドしてしまう
なんて事態に陥りがちです。
そんな方におすすめなのが、肥満外来。ダイエット専門の診療科です。
多くの場合、医師、栄養士、薬剤師、カウンセラーといった専門家が、患者に合ったダイエットを指導してくれます。
あくまでも個人の体調、生活習慣に合わせて指導してくれるほか、定期的な体の検査も行われるので、健康かつ確実に肥満を治療できます。メンタル面のサポートも万全で、ダイエットで最も難しい「継続すること」ができるようになります。
肥満外来の役割
肥満外来の役割は、読んで字のごとく肥満の治療です。
肥満は放置していると、糖尿病や高血圧、腰痛、関節痛、最悪の場合は心筋梗塞・狭心症など、さまざまな合併症を引き起こしかねない危険な状態。
悪化した肥満は「肥満症」と呼ばれ、治療を必要とするれっきとした「病気」です。
肥満の定義は、正確に言うと、
だそうです。
ポイントは「異常な」という部分で、たとえば、自分の年齢・性別における正常な体脂肪率を大幅に超えた場合、それは肥満とみなされます。
肥満外来ではこのように、肥満をただの「太りすぎ」ではなく「病気」として捉え、医療としての治療を行っていきます。
とはいえ、肥満の原因は食生活、運動不足、ストレスなどさまざまで、一人の医師だけで治療するのは難しいもの。
だからこそ、肥満外来では医師だけでなく栄養士、薬剤師、カウンセラーといった各分野のプロフェッショナルを抱え、患者を多角的にサポートしていきます。
肥満外来の必要性
それでも「自分でダイエットできるし、わざわざ肥満外来に通わなくても大丈夫!」と考える人は多いですよね。
肥満の人はなぜ、肥満外来に通うべきなのでしょうか。3つの理由を解説します。
1. 肥満の悪化は、生活習慣病の原因になる
上記でも説明しましたが、肥満を放置することはさまざまな病気の原因になります。
なかでも、肥満によって引き起こされる代表的な病気は「生活習慣病」。肥満を進行させるような生活を送っていると、それは深刻な生活習慣病となって体に牙を剥くのです。
発症のリスクのある病気は以下の通り。
・糖尿病
・脂質異常症
・高血圧
・動脈硬化
・メタボリックシンドローム
・虚血性心疾患
・脳梗塞などの脳血管疾患
・脂肪肝などの肝臓障害
・腎障害
・変形性膝関節症などの関節障害
・睡眠時無呼吸症候群 など
生活習慣病の共通点は、主に血管、関節、呼吸などに問題を引き起こすこと。
特に血管については、心筋梗塞や脳梗塞など、命をおびやかす病気にも発展しかねません。肥満治療に保険を適用できるのも、こうした重篤な危険性を公式に認められているから。
さらに恐ろしいことに、生活習慣病の多くは自覚症状が現れません。
知らず知らずのうちに進行していく傾向があるため、自覚症状が現れたときには、すでに危険な状態になっていることも少なくないのです。
だからこそ、肥満は早期治療がとても大事。
大丈夫だと思って放置したり、ダイエットに失敗したりしているうちに、病魔は体を蝕んでいきます。
肥満外来に通えば、肥満を高確率で改善できるのはもちろんのこと、緻密な検査によって病気の予兆もしっかりと発見できます。
▼肥満と病気の関係はこちらにもまとめてます。
2. 自己流ダイエットの危険性
また、肥満外来の必要性の一つに、「自己流ダイエットの危険性」も挙げられます。
現代では、全世界の肥満人口は21億人とも言われ、その数は1980年と比べて2.5倍。肥満を解消するための情報はどんどん需要が高まっています。
それに加えてインターネットの普及も手伝い、いまや世の中には星の数ほどのダイエット方法が広まりました。しかし、こうした情報の全てを鵜呑みにするのはとても危険です。
私も「メディケアダイエット」という肥満外来に通ってから教わりましたが、ダイエットで重要なのは、自分の体にとってベストな方法を選択すること。
一口に「肥満」と言っても、その種類や度合いは人それぞれで、原因も多岐にわたります。
肥満を解消するためには、自分の肥満の原因をしっかりと特定し、正しい知識をもとにアプローチしなければなりません。
逆に言えば、間違った知識でダイエットを続けていても、効果は一向に現れません。
そればかりか、極端な食事制限によって栄養不足に陥ったり、ライフスタイルに合わない計画を立てて挫折し、そのストレスからうつ病を患ってしまったりと、心身を追い込むケースさえあるそうです。
3. リバウンドによる悪循環を避ける
また、自己流ダイエットでもう一つ厄介なのが、リバウンドです。
自分一人で取り組むダイエットは、管理やサポートをする人がいません。そのため、せっかく痩せても食事を我慢できなくなり、リバウンドするケースがとても多いです。
しかし、人間の体には本来の体型を維持しようとする働きがあるため、リバウンドを繰り返せば繰り返すほど、太りやすい体質へと変わっていってしまいます。
こうした事態を防ぐためには、まずはダイエットの計画から見直し、無理なく継続できる内容へと変更しなければなりません。
ですが、自己流ダイエットをしている人は、目標体重を極端に設定しがち。自ずとダイエットの内容も過激になり、激しい運動や食事制限に頼ってしまいます。
それに対し、体は自らを守ろうとして基礎代謝を抑えるので、これまた太りやすい体になります。もう完全な悪循環です。
肥満外来なら、無理のないダイエットプログラムのもと、担当医のサポートを受けられます。
健康的な食事と生活習慣を取り戻すことで、痩せやすい体質を作っていくため、仮に時間はかかったとしても、リバウンドの危険性は非常に少ないです。
▼自己流ダイエットの危険性についてもっと詳しく
肥満外来を受診するべき人
では、肥満外来にはどんな人が通うべきなのでしょうか。以下のような人は、肥満外来への受診を検討してみてください。
1. BMI値25以上の人
当たり前ですが、肥満外来を受診するのは「肥満の人」。
その目安となるのが、日本肥満学会の定める「BMI(ボディ・マス・インデックス)」という指標です。以下の計算を行うことで、自身の肥満度を客観的な数値として割り出せます。
BMI値=体重(kg)÷〔身長(メートル)×身長(メートル)〕
BMI値の見方は以下の通りです。
BMI値 | 肥満レベル |
18.5未満 | 痩せ型 |
18.5~24 | 普通 |
25~29 | 肥満レベル1 |
30~34 | 肥満レベル2 |
35~39 | 肥満レベル3(保険適用内) |
40以上 | 肥満レベル4(保険適用内) |
日本では、BMIが25以上の人を肥満と定めています。そのため、肥満外来に通うべきはこのラインから。
ちなみに、BMIが35以上の「高度肥満症」という状態の人は、保険の適用内で治療できます。
高度肥満症になると、糖尿病や高血圧、動脈硬化などのリスクが高まり、医療行為の必要性を認められるからです。
2. ダイエットの失敗・リバウンドを繰り返している人
保険の適用内にはなりませんが、ダイエットで挫折やリバウンドを繰り返している人も、肥満外来の受診を検討してみてください。
このような人に多いのは、無理な食事制限や運動にトライしていたり、加齢に伴って痩せづらい体質に変わったりしているケースです。
肥満外来では、肥満の原因を医学的に特定し、その原因に対する無理のないアプローチを考えていきます。
3. その他の向いている人
その他、以下のような人も肥満外来に向いていると思います。
・腹囲が平均を上回っている(男性85cm、女性90cm)
・BMIが標準値(5~25)を上回っている
・平均体重を著しくオーバーしている
・ダイエットに著しいストレスを感じる
・これまでは痩せていたのに、体重が急激に増加した
・慢性的な睡眠障害や、腹部の膨満感、便秘、食事の悪習慣などを抱えている
・太り気味に見えるが、皮下脂肪はあまりない
・糖尿病や高血圧などの生活習慣病を抱えている、または過去に患ったことがある
こうした人たちは、すでに肥満もしくは肥満の予備軍だと思います。いちど肥満外来を受診し、自分の体の状態を把握することがおすすめです。
▼クリニック探しの参考に。