突然ですが皆さん、肥満をただの「太っている状態」だと思っていませんか?
実は肥満は、糖尿病や脂質異常症など、さまざまな生活習慣病・合併症を引き起こす危険な状態。重度になると保険も適用される、れっきとした病気です。
ここでは、知っておきたい肥満と病気の関係を解説します。
もくじ
肥満と病気の恐ろしい関係
肥満は悪化すると、さまざまな病気を誘発します。
その多くは生活習慣病で、糖尿病や高血圧、脂質異常症、さらには心筋梗塞など、命に関わる疾病へと発展するケースもあります。
このように、健康に大きな打撃を与える肥満は「肥満症」と呼ばれ、保険の適用も認められます。肥満症は正真正銘の疾患であり、医学的に治療が必要な状態なのです。
肥満の基準は、体脂肪の量に基づいて決まります。
体脂肪量を測るポピュラーな方法として普及しているのが、「BMI(ボディ・マス・インデックス)」という指標を使った診断です。
日本では、BMI値が25以上になると肥満、35以上になると重度の肥満=肥満症と見なされます。これは、BMI25前後を境目に、高血圧、脂質異常症、耐糖能障害といった合併症の発症率が上がることが理由です。
男性の3人に1人、女性の5人に1人が肥満
こうした肥満を持つ人の割合は決して少なくありません。
厚生労働省の発表によると、平成28年度の20歳以上を対象とした肥満者の割合は、
- 男性:31.3%
- 女性:20.6%
であり、実に男性の3人に1人、女性の5人に1人が肥満となる計算です。
特に30〜40代の働き盛りの男性は気をつけましょう。
30代は男女ともに、運動を習慣化している人が最も少ない年代です。
平成25年度の調査によると、日常的に運動している男性は18.4%、女性に至っては9.8%にとどまっており、多くの人が運動不足に陥っていることが見て取れます。
肥満はいまや、国民病と呼べるほどに広まっているのです。
肥満の持つ恐ろしいリスク
そんな肥満ですが、急激に健康を損なうわけではないため、何もせずに放置している人も少なくありません。
これは非常に危険です。
重篤な生活習慣病に発展
前述の通り、肥満は見た目を変えるだけでなく、放置すると糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に発展します。
しかも、これらは一つだけでなく同時多発的に発症し、メタボリックシンドロームなどの合併症の原因になるのです。
また、高血糖や高血圧は血管に負担のかかる状態なので、進行すると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞といった重病にも繋がります。
そもそも日本人は生活習慣病を発症しやすい
あまり知られていませんが、日本人は生活習慣病を発症しやすい民族です。
近年、日本人の生活習慣病の割合は急上昇しており、その背景には、インスリン分泌能力の不足という日本人特有の理由があります。
その他、肥満は体重の負荷による関節障害、睡眠時に何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群にも繋がります。
特に睡眠時無呼吸症候群は、起床後のさまざまな体調不良やストレスのほか、突然死の恐れもある非常に恐ろしい病気です。
肥満で大切な「早期解決」
肥満の治療で大切なのは、早期解決です。油断して放置していると、糖尿病や高血圧はどんどん進行し、体内を蝕んでいきます。
さらに厄介なことに、生活習慣病のほとんどは、初期段階では目に見えた症状が出ません。
水面下で悪化する性質のため、自覚症状が現れるころには、著しい健康障害を抱えている場合も多いです。
また、肥満に陥る多くの理由は、1日の摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、それが日常化しているから。
つまり、日々の悪習慣によって起こるべくして起こっているので、風邪のように自然と治ることはありません。乱れた生活にメスを入れない限り、肥満は日を追うごとに悪化し、体もその生活に順応するため、痩せづらい体質へと変わっていくのです。
▼正しい治療を受けるなら。
肥満でかかりやすい病気
さて、ここからは、肥満によって引き起こされる主な病気を紹介します。
糖尿病
糖尿病とは、血糖値が上昇する病気です。高血糖は血管を傷つけるため、特に血管の細い神経や目、腎臓の合併症を引き起こしやすいのが特徴です。
糖尿病を疑われる人は、日本人の約1000万人とも言われていますが、自覚症状がほとんどなく、いつの間にか悪化させてしまうケースも少なくありません。
高血圧
血圧とは、血管壁にかかる圧力のこと。これが正常値より高くなると、高血圧と呼ばれる状態になります。
血管壁に圧力がかかり続けると、血管にダメージを与え、動脈硬化などを引き起こすため、最悪の場合は脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などに発展します。日本人の有病者は4300万人とも言われています。
脂質異常症
脂質異常症は、血液中の脂肪分濃度が多くなったり少なくなったりする病気です。自覚症状が現れない一方で、悪化すると動脈硬化に繋がり、重篤な病気の引き金になります。
大別して「原発性高脂血症」と「続発性高脂血症」の2種類に分けられ、肥満が原因になるのは後者です。
痛風
足の親指の付け根などが、発作的な激痛に襲われる痛風。30~50代の男性に多く、日常生活に支障をきたすほどの痛みが1週間ほど続きます。
体内の尿酸が過剰になることで起こるため、痛みが治まったからと放置していると、腎疾患や尿路結石、動脈硬化に繋がります。
心筋梗塞・狭心症
心筋梗塞・狭心症は、いずれも冠動脈の詰まりが引き起こす病気です。
冠動脈とは、心臓の筋肉に血液を送る動脈のことで、塞がると心臓に酸素や栄養が届かなくなり、重度の場合には命に関わります。特に心筋梗塞は、死亡率12~30%の非常に危険な病気です。